神戸市・薬膳専門家さんのための教室 つばめ薬膳アカデミー
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薬膳と中医学の関係について

薬膳と中医学の関係について

「「薬膳」と聞いてどんなイメージがありますか?」

 

私が講師活動をスタートした時から、初めて学ばれる方に必ずお聞きしてきたことです。

 

以前は

「薬くさそう」

「苦そう」

「ガマンして食べないといけない感じ」

…というようなお答えがよく返ってきました。

 


でも最近は

「体質に合わせて食べるものを選ぶ」

「特別な材料を準備しなくてもスーパーで売っている食材でも作ることができる」

「身体のバランスを整える食事」

…というように、身近に活用できる身体のためによいイメージを持つ方が増えてきました。

これは薬膳をお伝えする身にとってとてもうれしいことです。

 

でもその一方で、なぜ薬膳が「身体のバランスを整える」ことができるのか、「特別な材料でなくても体質に合わせて選ぶ」ことができるのか、ということまで理解をしている人は少ないのではないでしょうか?

 

「薬膳」の基礎には「医学」があります

実は薬膳には基礎となる医学があります。
それは中医学(中国伝統医学)です。
今から約2000年前に、現在でも活用されている基本的な理論ができあがり、奈良時代のころには日本にも伝わって、のちに漢方として発展した医学です。
つまり薬膳とは、中医学の考えに基づいた食事のこと。
現代の栄養学が現代医学を基礎に発展してきたのと同様に、中医学版の栄養学として発展してきたのが薬膳の理論なのです。
つまり薬膳とは、中医学を使って行う手段の中の食事のことを指しています。

中医学とはどんな医学?

では中医学とはいったいどういう特徴を持った医学なのでしょうか?

現代医学を使って病気を診断・治療するには、患部を画像で映し出したり組織を検査・分析したりして「どこが病んでいるか」を「ピンポイント」で突き詰めて明らかにし、薬や手術などでその病んでいる部分や病気を引き起こしている悪いものを「取り除く」ことを治療の中心とします。
場合によっては内臓や組織を摘出したり、移植したりすることもありますね。
これは現代医学に代表される西洋医学が、私たちの身体をパーツの集合体としてとらえているからです。
いわばミクロの視点をに基づいている、とも言えます。
解剖学によって明らかにされた身体の構造から、それぞれの内臓・器官・組織がどのような働きをしているかを観察した結果が医療として活かされているのです。

対して中医学は、私たちの身体をひとつのシステムとしてとらえているのが特徴です。
中医学に代表される東洋医学は、私たちの身体をひとつの宇宙(=もっとも完全完璧なシステム)ととらえ、何か病気や不具合が起きるのはそのシステムが何らかの原因でバランスを崩したと考えます。
いわばマクロ的な視点です。
そしてひとつの宇宙である身体のしくみを知るために、昔の人は宇宙のルールをあてはめました。
つまり自然哲学を基礎としたのです。
中医学の場合は中国の古代自然哲学である陰陽五行学説が基礎となっています。
ちなみに陰陽五行学説は医療だけでなくあらゆるものに応用されています。
例えば、時間にあてはめたのが干支による暦、都市計画や家の間取りに活用したのが風水、という具合です。

中医学って意外に身近なんです

このように身体全体をひとつのシステムを整えて病気や不調を改善しようとするのが中医学の特徴です。
そしてその手段にはさまざななものがあります。

例えば中医学に基づいて薬を組み立て処方するのが、いわゆる漢方薬(専門的には湯液といいます)です。
また細い針やお灸で身体を刺激することで治療を行うのが鍼灸、手でさすったりたたいたりして刺激をするのがあんまあるいは推拿(すいな)です。
また治療行為だけでなく、病気の予防として行うものもあります。
例えば中医学の考えに基づいた運動が気功です。
また日常生活の送り方に活かすのが養生、そして食事の組み立てに活用するのが薬膳、となります。

このように薬膳にはただ単に身体にいいといわれるものを食べるのではなく、その人の身体にとって食べるとよいものを選ぶための理論がちゃんと系統立てて存在しています。
そして、その基礎である中医学の知識は自分で自分の健康を維持するために、とても「使える」知識なのです。